入口を守る者の責任

歴代誌講解9

入口を守る者の責任

歴代誌上 9:17-27

17 門衛は、シャルム、アクブ、タルモン、アヒマン。その兄弟シャルムが頭で、18 今でも東にある王の門にいる。彼らはレビ人の宿営の門衛である。19 コラのひ孫でエブヤサフの孫でコレの子であるシャルムと、その父の家の兄弟たち、つまりコラ家の者が、幕屋の入り口を守る者としての職務に就いた。彼らの先祖も主の宿営の入り口を守っていた。20 エルアザルの子ピネハスが以前彼らの長であった。主が彼と共におられますように。21 メシェレムヤの子ゼカルヤが臨在の幕屋の入り口の門衛であった。22 えり抜かれて戸口に立った門衛は皆で二百十二人、それぞれその村で登録されている。ダビデと先見者サムエルが彼らにこの仕事を任せた。23 彼らとその子孫が、幕屋である主の神殿、門の警備を託された。24 彼らは門衛として東、西、南、北の四方に立った。25 村にいる彼らの兄弟たちは、時に応じて彼らを助けに来て七日間とどまった。26 四人の門衛長はいつも任務に就いていた。神殿の祭司室と宝物庫の責任を負ったのはレビ人であった。27 彼らは神殿の周囲で夜を過ごした。神殿を警備し、毎朝その扉を開くことが彼らの責任であった。

門は大切な場所

 20年前の6月8日、大阪教育大学付属池田小学校に包丁を持った男が侵入しました。
 犯人の宅間守は小学1~2年生の児童を襲い、抵抗した先生も切りつけました。8名の児童が亡くなり、児童13名と先生2名がケガをしました。
 宅間守は逮捕・起訴され、死刑になりました。

大阪教育大学付属池田小学校事件の概要と経過

 それまで学校は地域に開かれた場所でした。校庭などは近所の子どもたちが自由に遊べる場所でした。誰でも自由に出入りができたわけです。
 しかしこの事件をきっかけに、部外者の立ち入りを禁じたり、校門に見張る人を立てたりするようになりました。
 門は子どもたちの安全を守るうえで大切な役割があります。

門衛の系図

 歴代誌9章では、ユダが神に背いて捕囚になったことと、捕囚から帰ってきた人たちのことが記されています。捕囚から帰ってきた人たちの中で、特に門衛のことが強調されています。
 門衛もレビ人の一部に割り当てられた任務の一つです。6章では詠唱者たちが強調されていましたが、ここでは門衛たちが強調されています。
 詠唱者はダビデの時代に立てられましたが、門衛はイスラエルが荒野で生活をしていたころからありました。コラ家の人たちが幕屋の入口を守りました。
 神殿が立てられてからも、東西南北の四方に門衛が立てられ、神殿を警備し、門の開け閉めをしていました。

門衛はふさわしくないものを拒む

 門衛の第1の役割は警備です。
 中に入る資格がある人とない人を区別し、資格がない人は追い返さなければなりません。

ふさわしくないものを中に入れてはいけない

 最初に門衛を置いたのは神様です。
 アダムとエバが罪を犯してエデンの園から追放されたとき、神様は命の木に至る道にケルビムときらめく剣の炎を置きました。罪ある人が神様のところに近づくことができないように警備するのです。

 イスラエルがヨルダン川の東に滞在した時、イスラエルの男たちがモアブの女性たちにそそのかされ、偶像崇拝するという事件がありました。
 モーセから主の怒りを聞いた民は、臨在の幕屋の入口で悲しみました。
 そのとき、1人のイスラエルの男が、モアブの女性を連れて入ってきました。
 門衛のリーダーだったアロンの孫ピネハスは、槍を持って彼らを負い、槍で突き刺しました。
 過激な話ですが、ピネハスは門衛の役割を忠実に果たしました。
 ふさわしくない人を中に入れてはいけないのです。

ドロボウの声と羊飼いの声

 イエス様は、「わたしは羊の門である」と言いました。

7 イエスはまた言われた。「はっきり言っておく。わたしは羊の門である。8 わたしより前に来た者は皆、盗人であり、強盗である。しかし、羊は彼らの言うことを聞かなかった。9 わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる。その人は、門を出入りして牧草を見つける。

ヨハネによる福音書10:7-9
羊の門

 門を出入りしないで羊のところに来るのは、ドロボウです。
 彼らは羊を利用し搾取するために来ます。彼らの言葉に惑わされてはいけません。
 門を出入りする、本当の羊飼いの声に聞き従わなければなりません。
 本当の羊飼いは、羊が命を豊かに受けるために来ます。
 迷える小羊である私たちは、羊飼いイエス様の声に従うことで、神様のところに帰ることができます。

生きる意味を見失わさせるこの世の声

 エデンの園から追放され、この罪と悲惨の世界に生きている私たちは、色々な声、様々な情報を聞かされています。
 人間は猿から進化した偶然の産物。
 自己責任。
 生産性。
 そういう言葉によって私たちは考える力を奪われ、生きる意味を見失い、狭く汚い檻の中の家畜のように飼いならされていきます。
 その声の主は私たちの毛を刈り、乳をしぼり、肉を食らうのです。

 先日知り合った方から、YouTubeで話題になった歌を教えてもらいました。もう4年前の曲になりますが、「命に嫌われている。」という曲です。カンザキイオリさんが作詞作曲しました。
 その歌詞の一部を紹介します。

お金がないので今日も一日中惰眠を謳歌する。
生きる意味なんて見出せず、無駄を自覚して息をする。
「寂しい」なんて言葉でこの傷が表せていいものか
そんな意地ばかり抱え今日も一人ベッドに眠る。

少年だった僕たちは
いつか青年に変わっていく。
年老いていつか枯れ葉のように
誰にも知られず朽ちていく。

 今を生きる若者たちの切実な訴えだと思います。

命の言葉を語り、この世の声を拒む

 今、同じ日本に生きる若者たちが、生きていても無駄なんじゃないかと思わされながら生きています。
 しかしそうではない。
 私たちが生きることを願い、私たちに命を豊かに得させるために十字架で死に、復活された方がいます。
 その方の命の言葉、福音を届けなければなりません。
 教会という柵の中に留まっていては届きません。門の外にいる人には、門に立つ人が呼びかけなければなりません。
 それが私たち一人一人です。
 福音を語り、この世の声に対してはNOを突きつけなければなりません。
 それが入口を守る者の第1の責任です。

門衛は神のそばで過ごす

 門衛の第2の役割は戸締りです。
 朝には門を開け、夜には門を閉じます。そのためには一番早く来て、一番遅く帰らなければなりません。それで門衛の人たちは幕屋や神殿の近くに住みました。
 サムエルも幼い頃は幕屋の扉を開く役割が与えられていました。それで神の箱が安置された聖所で寝泊まりしていました。近くというか、中で生活していたわけです。

 最初に来て最後に帰るというのは辛いですね。誰よりも朝早く起き、誰よりも夜遅く眠る。
 実際は一人ではなく、複数のチームで担当していたわけですが、寂しさはあったと思います。
 多くの人が住む住宅地ではなく、神殿や幕屋の近くで生活するというのも寂しいものがあったと思います。

そこにいて当たり前

 イエス様が12歳の時のことです。イエスくんは、マリアとヨセフや、村の人たちと一緒にエルサレムに行きました。
 祭りが終って帰る途中、マリアとヨセフはイエスくんがいないことに気づきました。エルサレムに戻りながら探して、3日後にようやく見つかりました。
 イエスくんは神殿の境内で学者たちと話をしていたのです。
 ユダヤでは男の子は13歳から成人ですが、12歳はまだまだ子どもです。それが3日間も親から離れていたとなると、寂しいというか恐いと思いませんか。
 しかしイエスくんはこう答えました。

すると、イエスは言われた。「どうしてわたしを捜したのですか。わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなかったのですか。」

ルカによる福音書2:49

 イエスくんにとって神殿は天の父の家であり、そこにいて当然の場所でした。

喜びを見出せる場所

 皆さんにとって、教会で過ごす時間はどのような時間ですか。
 礼拝が始まる直前にしぶしぶ来て、1時間ちょっと忍耐して、終わったら早く帰りたい時間でしょうか。
 詩人はこう歌いました。

あなたの庭で過ごす一日は千日にまさる恵みです。主に逆らう者の天幕で長らえるよりは/わたしの神の家の門口に立っているのを選びます。

詩編84:11

 神様のところで過ごす1日は、1000日よりもよい。
 神殿の入口に立たされている。何の罰ゲームかと思うような寂しい状況も、神様に逆らう人のところで長生きするよりはいい。それぐらいこの詩人は、神様のところで過ごす時間を大事にしています。

 もし教会が早く来て、帰るのをためらう場所でないなら、どこかに問題があります。そんなところに再び来たいと思わないし、友だちを誘おうとは思いません。
 先週、「また来たいと思える教会になるにはどうしたらいいか」というテーマで分かち合えて感謝です。皆さんで作っていきましょう。
 ただ、教会がただ楽しい場所になればいいというわけではありません。夢の国のようなアミューズメント施設になれば、朝早く来て帰るのもためらうでしょう。
 一番はイエス様に出会えることです。
 だから教会がイエス様と出会う場所、イエス様と一緒に過ごしたいと思える場所でないなら、どこに問題があるのか、と言い換えることができます。
 そのような教会を作り上げていくことが、入口を守る者の第2の責任です。

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