大志を抱け

歴代誌講解24

大志を抱け

歴代誌上 22:5-16

5 ダビデは、「わが子ソロモンは、主のために壮大な神殿を築き、その名声と光輝を万国に行き渡らせるためにはまだ若くて弱い。わたしが準備しなければならない」と言って、死ぬ前に多くの準備をした。6 ダビデはその子ソロモンを呼び、イスラエルの神、主のために神殿を築くことを命じて、7 ソロモンに言った。「わたしの子よ、わたしはわたしの神、主の御名のために神殿を築く志を抱いていた。8 ところが主の言葉がわたしに臨んで、こう告げた。『あなたは多くの血を流し、大きな戦争を繰り返した。わたしの前で多くの血を大地に流したからには、あなたがわたしの名のために神殿を築くことは許されない。9 見よ、あなたに子が生まれる。その子は安らぎの人である。わたしは周囲のすべての敵からその子を守って、安らぎを与える。それゆえ、その子の名はソロモンと呼ばれる。わたしは、この子が生きている間、イスラエルに平和と静けさを与える。10 この子がわたしの名のために神殿を築く。この子はわたしの子となり、わたしはその父となる。わたしはその王座を堅く据え、とこしえにイスラエルを支配させる。』11 わたしの子よ、今こそ主が共にいてくださり、あなたについて告げられたとおり、あなたの神、主の神殿の建築を成し遂げることができるように。12 賢明に判断し識別する力を主があなたに与え、イスラエルの統治を託してくださり、あなたの神、主の律法を守らせてくださるように。13 あなたは、主がイスラエルのために、モーセにお授けになった掟と法を行うよう心掛けるなら、そのとき成し遂げることができる。勇気をもて。雄々しくあれ。恐れてはならない。おじけてはならない。14 見よ、わたしは苦労して主の神殿のために金十万キカル、銀百万キカルを準備した。青銅も鉄もおびただしくて量りきれない。材木も石材も準備した。更に増し加えるがよい。15 あなたのもとには多くの職人、採石労働者、石工、大工、あらゆる分野のあらゆる達人がおり、16 金、銀、青銅、鉄も数えきれない。立ち上がって実行せよ。主が共にいてくださるように。」

少年よ、大志を抱け

ウィリアム・S・クラーク博士

 「少年よ、大志を抱け(Boys be ambitious)」
 北海道大学の前身である札幌農学校で初代教頭を務めたウィリアム・クラーク博士の言葉として知られています。
 クラーク博士はマサチューセッツ農科大学の教授でしたが、日本政府の要請を受けて1年間の休暇を取って来日しました。ですからクラーク博士が教頭だったのはその間の9か月間だけです。その間に植物学を始めとした自然科学を教え、学生たちに聖書を配ってキリスト教についても教えました。学生たちは「イエスを信じる者の誓約」に署名し、キリスト教の信仰に入る決心をしました。
 そして北海道を去る時、見送りに来た学生たちに「Boys be ambitious!」と叫んで去って行ったのです。
 わずか9か月。今年もすでに10月が終ろうとしていますから、9ヶ月がいかに短いかわかりますね。そのような短期間でしたが、クラーク博士との出会いは学生たちに大きな影響を与えました。
 16人の教え子の中からは大志を抱き、学者、経営者、外交官などが出ています。北海道大学の初代総長もその中の一人です。
 また信仰も受け継がれました。クラーク博士と直接の交流はありませんでしたが、2期生の中には内村鑑三や新渡戸稲造もいました。
 クラーク博士は確かに日本に大きな影響を与えた人物の1人です。
 1人の人物が与える影響には限りがありますが、その後を継ぐ人たちによって社会は変えられていきます。

神の壮大な計画への招き

 今日はダビデがソロモンを励ます場面です。
 ソロモンはダビデの息子で、ダビデの後を継いで王になります。
 ソロモンの母はバト・シェバです。ダビデが間違いを犯したときに身ごもった子は生まれてすぐに死んでしまいましたが、その後に与えられた子がソロモンです。
 17章で神殿を建てるのはダビデではないと言われたとき、誰がダビデの後を継いで王になるのか、名前までは預言されていませんでした。しかしその後、新たな預言が与えられて王座を継いで神殿を建てるのはソロモンだと示されたようです。
 ダビデは既に年を取り、先が長くないことを知っていました。
 神殿建設という志をソロモンに成し遂げてほしいとダビデは願っていますが、ソロモンはまだ若く指導力もありません。
 そこでダビデは、自分の命が続く間に、できる限りの準備をすることにしました。
 ダビデが準備したのは、人材と物資と、指導者です。

神殿建設の準備

 ダビデはイスラエル国内にいた外国人に、石を切り出す仕事を与えました。また同盟国のティルスから木材を扱う職人も派遣してもらいました。アドラムという人が労働者の監督に就いていました。こうして人手も技術者も監督者も揃えました。
 物資に関しては石材を調達する準備はできています。レバノン杉はソロモンの時代に追加で調達しました。戦利品や貢ぎ物によって数えきれないほどの金、銀、青銅、鉄が蓄えられています。
 後は指導者です。

神殿を建てるのはダビデの役割ではない

 ダビデは神から「わたしのために住むべき家を建てるのはあなたではない」と言われています。
 その理由はダビデが戦士だったからです。「あなたは多くの血を流し、大きな戦争を繰り返した。わたしの前で多くの血を大地に流したからには、あなたがわたしの名のために神殿を築くことは許されない。」と言われています。
 旧約聖書には神が命じた戦いもありますから、戦って血を流したことが問題なのではありません。
 役割の違いです。神殿を建てるのは戦士ではなく、平安を与える人の役目です。

神殿建設は安らぎの子ソロモンの役割

 平安、平和はヘブライ語でシャロームと言います。
 ソロモンの名前はシャロームから来ています。まさにソロモンは安らぎの人なのです。
 神はダビデに約束しました。「見よ、あなたに子が生まれる。その子は安らぎの人である。わたしは周囲のすべての敵からその子を守って、安らぎを与える。それゆえ、その子の名はソロモンと呼ばれる。わたしは、この子が生きている間、イスラエルに平和と静けさを与える。」
 実際、ソロモンの時代に戦争は記録されていません。
 ダビデは「立ち上がって実行せよ」とソロモンを励ますことで、神殿建設を成し遂げる次世代のリーダーを準備しました。

神の壮大な計画は世代を超えて受け継がれる

 神の壮大な計画は一世代では成し遂げられません。
 イスラエルの民がエジプトの奴隷から神の民になることも一世代では成し遂げられませんでした。
 モーセの時代に神はイスラエルの民を救い出し、ご自分の民としました。そしてシナイ山で律法を与えました。こうして国民と主権は定められました。後は領土です。神は約束の地カナンに導き入れます。しかしその役割はモーセではなく、ヨシュアに引き継がれました。
 モーセはヨシュアを励まし、ネボ山からカナンの地を見渡したところで亡くなりました。

神の国の福音はキリストの弟子たちに受け継がれてきた

 キリストは弟子を育てました。
 キリストは神の国の福音を告げましたが、それはまだ完成していません。弟子たちに受け継がれています。
 キリストからキリストの弟子たちへと、神の国の福音は委ねられてきました。
 パウロは弟子のテモテを励ましました。

そして、多くの証人の面前でわたしから聞いたことを、ほかの人々にも教えることのできる忠実な人たちにゆだねなさい。

テモテへの手紙二2:2

 福音がキリストからパウロ、パウロからテモテに受け継がれ、さらに忠実な人たち、ほかの人々へと受け継がれていっていることがわかります。
 神様の壮大な計画が受け継がれています。
 私たちもキリストの弟子としてそこに加えられています。
 また私たちは次世代のキリストの弟子たちを立て、「大志を抱け」「立ち上がって実行せよ」と彼らを励ます必要があります。

神の計画の実現は参加した人が目撃できる

 昨日は名古屋で行われたスポーツフェスティバルに参加してきました。スポーツをきっかけに福音を体験してもらおうというイベントです。
 日本でのスポーツミニストリーの中心的な働きを担う先生の中に、本郷台キリスト教会の池田恵賜先生がいます。
 池田先生は2014年に世界のスポーツミニストリーのカンファレンスに参加した時、神様から10×10というビジョンを示されました。10年で日本のキリスト教会が10倍の祝福を受けるというビジョンです。
 2014年から10年ですから、2024年までに10倍。日本のキリスト教会は約100万人の信徒、8000の教会があります。それが10倍になるとしたら、1000万人、8万教会です。
 そんなことが可能でしょうか。もう2021年も終わろうとしているのに。
 神様が与えたビジョンなら、必ず成し遂げられます。
 私たちが思い描いたのとは違う形になるかもしれませんが、神様は想像をはるかに超えたことを成し遂げます。
 実際、2019年のラグビーW杯の時期から、全国各地でスポーツフェスティバルが開催されるようになりました。そして確実に次の世代のクリスチャンリーダーや新しい宣教のネットワークが生み出されているのが見えます。
 昨日名古屋でそれを実感しました。
 神様の計画は確実に前進しています。
 神様の壮大な計画がどのように成し遂げられるのか、私も共に加わり、目撃したいと願っています。
 神様のプロジェクトに共に参加したい人はいませんか。

あなたの参加で世界は変わる

 ダビデがソロモンを励ます言葉は、モーセがヨシュアを励ました言葉に似ています。
 モーセはヨシュアにこう言いました。

5 主は彼らをあなたがたに引き渡される。あなたがたは、私が命じたすべての命令のとおりに彼らに行わなければならない。6 強く、雄々しくあれ。彼らを恐れ、おののいてはならない。あなたの神、主があなたと共に進まれる。主はあなたを置き去りにすることも、見捨てることもない。」

申命記3:5-6

 ポイントは3つです。御言葉に従いなさい。恐れるな。主が共にいるから。
 ダビデもこの3つのポイントでソロモンを励ましました。
 これらのポイントはすべて、神を信頼することに結びついています。神への信頼が土台になっています。

キリストにあって大志を抱け

 イエス・キリストは、御言葉に聞き従うよう求めました。また、恐れるなと繰り返し語っています。そして世の終わりまでいつも共にいると約束しました。同じ3つのポイントで私たちに語りかけています。
 私たちもキリストを土台とし、信仰の先輩たちの後を受け継ぐように招かれています。大志を抱けと呼びかけられているのです。
 クラーク博士も実は “Boys be ambitious, in Jesus Christ. (少年よ、キリストにあって大志を抱け)” と語ったのだという説もあります。

一人も欠けてはならない

 これは偉大な指導者に対する話ではないかと思うかもしれません。ヨシュアやソロモン、12弟子やテモテのようなリーダーたちに語られたのであって、私のような一般庶民には関係ないと思いたい人もいるでしょう。
 しかし神は、私たち一人一人に語りかけています。
 ペトロはこのように書きました。

あなたがた自身も生きた石として用いられ、霊的な家に造り上げられるようにしなさい。そして聖なる祭司となって神に喜ばれる霊的ないけにえを、イエス・キリストを通して献げなさい。

ペトロの手紙一2:5
アーチ

 イエス・キリストを土台として、私たち一人一人が生きた石として歴的な家を造り上げるのです。
 アーチを組むときに、石を一つ抜いてもいいですか。
 1つでも石が抜けてしまうと、全体が崩れます。1つの石も欠けてはいけません。
 霊的な家、神の国を建て上げていくために、一人も欠けてはならないのです。
 子どもであっても若者であっても、ここにいる一人一人が、かけがえのない存在です。
 私たちがキリストを土台とし、キリストの言葉に聞き従うのです。
 イエス様は世の終わりまでいつも私たちと共にいます。だから恐れるな。雄々しくあれ、強くあれ。

選挙への参加で社会は変わる

投票

 今は選挙期間です。
 それぞれが持つ1票によっては、選挙の結果は変わりません。
 しかしその1票が積み重なることで、大きな違いを生み出します。
 若い世代が投票するようになれば、政治家は若者に目を向けざるを得なくなります。
 一人一人が行動を起こすことで、社会は確実に変わっていきます。

キリストに従う人のいる場所が変わっていく

 一人一人のクリスチャンの存在は小さく無力に思えます。
 こんな地方の小さな教会に何ができるのかと思えてきます。
 しかし私たちが神様の壮大なプロジェクトに参加していくとき、世界は変わっていきます。
 私たちの生活の場所が変わります。家庭が変わり、職場や学校が変わり、この町が、この国が変わっていきます。
 神様の壮大なプロジェクトに、今私たちも招かれています。
 大志を抱き、ビジョンを抱いて神様のプロジェクトに参加していくとき、神様が私たちの想像をはるかに超えて素晴らしいことを成し遂げてくださることを目撃します。

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