歴代誌講解17
神が建てる家
歴代誌上 17:1-15
1 ダビデは王宮に住むようになり、預言者ナタンに言った。「見なさい。わたしはレバノン杉の家に住んでいるが、主の契約の箱は、天幕を張ってその下に置いたままだ。」2 ナタンはダビデに言った。「心にあることは何でも実行なさるとよいでしょう。神はあなたと共におられます。」3 しかし、その夜、ナタンに臨んだ神の言葉は次のとおりであった。
4 「わたしの僕ダビデのもとに行って告げよ。主はこう言われる。わたしのために住むべき家を建てるのはあなたではない。5 わたしはイスラエルを導き上った日から今日に至るまで、家に住まず、天幕から天幕へ、幕屋から幕屋へと移って来た。6 わたしはすべてのイスラエルと常に共に歩んできたが、その間、わたしの民を牧するようにと命じたイスラエルの士師の一人にでも、なぜわたしのためにレバノン杉の家を建てないのか、と言ったことがあろうか。
7 わたしの僕ダビデに告げよ。万軍の主はこう言われる。わたしは牧場の羊の群れの後ろからあなたを取って、わたしの民イスラエルの指導者にした。8 あなたがどこに行こうとも、わたしは共にいて、あなたの行く手から敵をことごとく断ち、地上の大いなる者に並ぶ名を与えよう。9 わたしの民イスラエルには一つの所を定め、彼らをそこに植え付ける。民はそこに住み着いて、もはや、おののくことはなく、昔のように不正を行う者に虐げられることもない。10 わたしの民イスラエルの上に士師を立てたころからの敵をわたしはことごとく屈服させる。わたしはあなたに告げる。主が、あなたのために家を建てる。11 あなたが生涯を終え、先祖のもとに行くとき、あなたの子孫、あなたの子の一人に跡を継がせ、その王国を揺るぎないものとする。12 この者がわたしのために家を建て、わたしは彼の王座をとこしえに堅く据える。13 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。わたしはあなたに先立つ者から取り去ったように、彼から慈しみを取り去りはしない。14 わたしは彼をとこしえにわたしの家とわたしの王国の中に立てる。彼の王座はとこしえに堅く据えられる。」
15 ナタンはこれらの言葉をすべてそのまま、この幻のとおりにダビデに告げた。
どのような建物や国を建てるのか
数々の熱戦が繰り広げられた東京オリンピック・パラリンピックは今日閉幕します。印象に残った試合や、選手の言動はありましたか。
今回のオリンピックのために国立競技場を建て替えたり、選手村を造ったりしました。そのような施設を今後どのように活用していくかは今後の課題です。またオリンピックやパラリンピックを通して明らかになった問題もあります。特に差別的な発言や選手の心の健康の問題などは日本の社会が向き合っていかなければならない問題でしょう。
後の世代にどのような遺産を遺すのか。維持管理に莫大な費用がかかる箱や問題を放置するわけにはいきません。後の世代を生かすものを遺していきたいものです。
神が家を建てる
ダビデはイスラエルの王になり、エルサレムを首都にしました。
ティルスの王ヒラムはダビデのためにレバノン杉で建てられた王宮を建設する支援をしました。
ダビデはエルサレムにテントを張り、そこに神の箱を運び入れました。
これで神の助けのもとにイスラエルを治める体制ができあがりました。ダビデは王として安心して暮らすことができます。
しかし気がかりなことがありました。自分はレバノン杉の王宮に住んでいる。しかし神の箱はテントの下に置かれている。
神の箱は、神様がおられることの象徴。ですから神様をテントに住まわせているような状況です。
そのためダビデは、神様のためにもレバノン杉の家、すなわち神殿を建てようと思いました。
神殿を建てようという考えはよい
これはとてもよい考えです。捕囚から帰ってきた人たちは神殿の再建を途中でやめていました。自分たちは板で張った家に住んでいながら神殿は廃墟のまま。神様は預言者ハガイを通して叱りました。
ダビデが相談した預言者ナタンも、これはよい考えだと思いました。ナタンは王に対してもまっすぐに神の言葉を伝え、罪を指摘できる立派な預言者です。そのナタンが「心にあることは何でも実行なさるとよいでしょう。神はあなたと共におられます。」と言いました。
神殿を建てるのはダビデではない
しかし神はその夜ナタンに語りました。「わたしの僕ダビデのもとに行って告げよ。主はこう言われる。わたしのために住むべき家を建てるのはあなたではない。」
神殿を建てること自体は間違っていません。しかし建てるのではダビデではないと言います。
神の箱はこれまでもずっとテントの下に置かれてきた。そこは問題ではない。神殿を建てるのもよい。
しかしまず先にするべきことがある。それはダビデの名を高め、イスラエルの民を安心して住まわせこと。
これはアブラハムやモーセと交わした契約の更新です。
そして神様は驚くべきことを約束します。「わたしはあなたに告げる。主が、あなたのために家を建てる。」
ダビデが神の家を建てるのではない。神がダビデの家を建てる。
この家という言葉には単に建物としての家だけではなく、王朝とか神殿、家族という意味もあります。
まず神がダビデの子孫に王座を受け継がせ、ダビデ王朝を確立する。その子によって神殿が建てられ、その子は神の子とされる。このような約束です。
ダビデの計画は立派でしたが、神の計画はそれを遥かに上回っていました。
神がダビデの子孫に王座を与え、神の住まいを建てさせる
この神の計画はまずダビデの子ソロモンによって成就し、ソロモンが神殿を建てます。
その後イスラエル王国は南北に分裂しますが、ダビデの子孫が王家を受け継ぎ、南ユダ王国はダビデ王朝が続きます。
しかしその南ユダ王国が滅ぼされ、ダビデ王朝は途絶えました。
それでも神の約束は変わりません。
「彼の王座はとこしえに堅く据えられる。」との約束の通り、ダビデの子が再び王になり、イスラエルを再建する。油を注がれた者、メシアが来る。ユダヤ人はそのように期待し続けました。
そしてこの約束はイエス・キリストにおいて成就しました。
神の子イエス様はダビデの子孫としてこの世に生まれました。神が私たちの間に住みました。
言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた。
ヨハネによる福音書1:14
この宿るという言葉は、テントを張って住むというような意味があります。
そして十字架で死なれ復活されたイエス様は、王の王、主の主です。
神ご自身が建てるのでなければ空しい
私たちが神様に仕えようとすることは大事です。賛美の奉仕や祈りの奉仕。献金をささげる。友達や家族にイエス様のことを伝える。また教会の建物を維持管理するために補修する。そのような奉仕は素晴らしいことだし、神様が喜ばれることです。
しかし神様はそれよりもまず、神様の支配が確かにされることを求めます。神様の支配があるところに、神様が家を建てます。
奉仕や献金、伝道という行いをしても、そこに神様がおられないなら意味がありません。
家を建てようとしても、主が建ててくださるのでなければその労苦は空しいです。
イエスを主とするところにイエス様が教会を建てる
イエス様はこう約束しました。
わたしも言っておく。あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。
マタイによる福音書16:18
イエス様自身が「わたしの教会を建てる」との約束です。
これはペトロが「あなたはメシア、生ける神の子です」と信仰告白した後に語られました。
ですから、イエスは主であるという信仰告白の上に、神はご自身の教会を建てます。
イエスを主と信じ、神の支配を認める一人一人のところに教会が建てられていきます。
礼拝をささげるために集まった人々のところに、教会に来れなくてもなんとか礼拝したいと願ってオンライン礼拝する人々のところに、イエス様が教会を建てます。
私たちがイエスは主と告白するとき、そこがどんな場所であれ神がご自身で家を建てます。
私たちも共に家を建てる
14節で神は「わたしは彼をとこしえにわたしの家とわたしの王国の中に立てる。彼の王座はとこしえに堅く据えられる。」と約束しています。
神はわたしの家とわたしの王国、つまり神の家と神の国を建てようとしています。
神の王国は、神の支配を認めるところです。
ですから、イエスを主と認めるところに神の国は既に来ています。
まだ完成はしていません。建設中です。
どのような国になってほしいか
国を建てるとき、どのようなリーダーを立てるのかは大事です。
世界には様々なリーダーがいます。そのリーダーがどのような方針を打ち出すのかによって国の在り方が左右されます。香港、ミャンマー、アフガニスタンなどを見ると、その国や地域をどういうリーダーが治めるかによって人々の生活も変わってくるということがわかると思います。
日本の首相も変わりそうです。菅首相の自民党総裁の任期が今月切れます。菅首相は次の総裁選挙には出ないと表明しました。誰が自民党の次の総裁になるのか。それは誰が日本の次の首相になるかということです。
皆さんはこの国にどのようなリーダーが立てられてほしいと願っていますか。どのような国になってほしいですか。この国に対してどのようなビジョンを持っていますか。
皆さんの家庭や教会に対してはどうでしょうか。どのような家庭を築きたいですか。家族の中でどのようなリーダーシップを期待しますか。
私たちの教会はどのような教会でありたいですか。教会の中でどのようなリーダーシップを求めていますか。
一人の強力なリーダーに従う組織
1人の指導者が強力なリーダーシップを持つ国があります。そのような国では指導者に引っ張られ、様々な事業が行われます。国の威信をかけて大事業を成功させ、世界に影響力を示します。
強いリーダーシップによって国が発展していくように見えます。しかし強いリーダーシップによって、国民の生活は制限を受けることがあります。国の発展のためなら国民の生活は後回しです。
逆に1人の指導者が弱くても、国がまとまらず混乱します。
だから1人の指導者に依存するのは危険です。権力は分散した方がいいです。様々な人が協力をして国を建て上げていくのです。
それは家庭や教会においても同じことが言えるのではないでしょうか。
たとえば1人の牧師に権力が集中している教会。牧師先生様の言葉が神の言葉のように扱われ、絶対従順が求められる。そんな教会、考えただけで逃げ出したくなります。
神は人とチームを組む
神はご自分の家、ご自分の国をどのように建て上げようとしておられるのでしょうか。
全知全能の神が、強力なリーダーシップを取る。神の民は従順しなければならない。そこに人間の考えは関係ない。
そのような国ではないようです。
むしろ神は多様な人々を用いて神の家、神の国を建て上げようとしています。
神はダビデの意見を聞き、その子ソロモンによって神殿を建てることを許します。
神は私たちと共にチームで働こうとしています。
そうであるならば、地上の国々も、家庭も教会も、共にチームで建て上げていくべきではないでしょうか。
互いの意見に耳を傾け、助け合う。神を愛し、隣人を自分のように愛するチームです。
あなた神の家を建てるために必要な存在
長期的なビジョンを達成するためにチームは不可欠です。
アフリカのことわざに「早く行きたいならひとりで歩いてください。遠くまで行きたいならほかの者と共に歩いてください。」というものがあるそうです。
神は今も家を建て続けています。神の壮大な計画を成し遂げるために、神は私たちを必要としています。
私たちは神の家を建て上げるために必要不可欠な存在です。
19 従って、あなたがたはもはや、外国人でも寄留者でもなく、聖なる民に属する者、神の家族であり、20 使徒や預言者という土台の上に建てられています。そのかなめ石はキリスト・イエス御自身であり、21 キリストにおいて、この建物全体は組み合わされて成長し、主における聖なる神殿となります。22 キリストにおいて、あなたがたも共に建てられ、霊の働きによって神の住まいとなるのです。
エフェソの信徒への手紙2:19-22
私たちはキリストという土台の上に建てられる神の住まい、神の家です。
色々な違いを持った人が互いに組み合わされることで、神の家は建て上げられていきます。
誰一人欠けてもいけない、大切な存在です。
私たちがイエスは主であると告白するところに、神はご自分の家を建てます。
一人一人が神の家の必要不可欠な部分です。互いに助け合い、補い合いながら、共に神の国をこの地に建て上げていくのです。