雄々しく戦え

歴代誌講解20

雄々しく戦え

歴代誌上 19:1-15

1 その後、アンモン人の王ナハシュが死に、その子が代わって王となった。2 ダビデは、「ハヌンの父ナハシュがわたしに忠実であったのだから、わたしもその子ハヌンに忠実であるべきだ」と言って、使節を遣わして哀悼の意を表そうとした。ところが、ダビデの家臣たちがハヌンに哀悼の意を表すためにアンモン人の領地に入ると、3 アンモン人の高官たちはハヌンに言った。「ダビデがお父上に敬意を表して弔問の使節を送って来たとお考えになってはなりません。ダビデの家臣があなたのもとに来たのは、この地を探って倒すため、うかがうためにちがいありません。」4 それでハヌンはダビデの家臣を捕らえ、ひげをそり落とし、衣服も半分、腰から下を切り落として追い返した。5 この人たちが甚だしい辱めを受けたという知らせがダビデに届くと、ダビデは人を遣わして彼らを迎えさせ、王の伝言として、「ひげが生えそろうまでエリコにとどまり、それから帰るように」と言わせた。6 アンモン人はダビデの憎しみをかったことを悟った。ハヌンとアンモン人は銀千キカルを送って、アラム・ナハライム、アラム・マアカ、ツォバから戦車と騎兵を借り受けようとした。7 こうして彼らは戦車三万二千両を借り、またマアカの王とその民の加勢を得た。彼らはメデバの前に来て陣を張った。アンモン人も町々から戦うために集まった。8 これを聞いたダビデは、ヨアブをはじめ勇士たちの全軍を送り出した。9 アンモン人は町の入り口まで出て戦いに備え、援軍として来た諸国の王は野にあって戦いに備えた。10 ヨアブは戦線が前方と後方にあるのを見て、イスラエルの全精鋭から兵をえりすぐり、アラム軍に向かって戦列を整え、11 残りの兵士を兄弟アブシャイの指揮にゆだね、アンモン軍に向かって戦列を整えさせた。12 ヨアブは言った。「アラム人がわたしより強ければ、こちらを助けてくれ。アンモン人がお前より強ければ、そちらを助ける。13 我らの民のため、我らの神の町々のため、雄々しく戦おう。主が良いと思われることを行ってくださるように。」14 ヨアブと彼に従う兵士たちが戦おうと迫ると、アラム軍はヨアブの前から逃げ去った。15 アラム軍が逃げるのを見ると、アンモン人も、ヨアブの兄弟アブシャイの前から逃げ出し、町の中に入った。こうして、ヨアブはエルサレムに帰った。

心を燃やせ

 昨日は鬼滅の刃の映画がテレビで放送されていました。
 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は2020年10月に公開され、日本の歴代興行収入1位となりました。2020年に世界中で公開された映画の中でも1位となりました。
 アニメーションですが、恐ろしい鬼が出てきたり血が流れたりする場面があるので、子どもが見るときは注意が必要です。しかしストーリーはとても良いです。
 主人公の竈門炭治郎は家族を鬼に殺されてしまいました。妹の禰豆子は生き残りましたが、鬼に変えられてしまいました。炭治郎は禰豆子を人間に戻す方法を探すため、鬼の戦いに入っていきます。
 様々な鬼が登場します。鬼を退治するためには、首を切り落とさなければなりません。その鬼もかつては人間でした。人間だったころに果たせなかった思いなどが、鬼の特徴として現れてきます。特に兄弟や親子といった家族の物語が背景にあります。炭治郎はただ鬼の首を切るだけではなく、鬼の人間だったころの思いに触れ、癒すような戦いをします。
 無限列車編では炭治郎と仲間たちがリーダーの1人である煉獄杏寿郎と共に鬼と戦います。魘夢という名のその鬼は、人に夢を見させる能力を持っていました。炭治郎は家族と幸せに暮らしていたころの夢を見ます。幸せな夢の世界からは出たくなくなります。炭治郎もそれが夢であることに気づきますが、家族に引き留められます。それでも炭治郎は家族と別れ、鬼と戦うことを決意します。そして亡くなった父の声をきっかけに、夢から覚める方法を見つけ出します。
 人には心を燃やし戦わなければならない時があるのです。

メデバの戦い

 今日と来週はアンモンとの戦いです。
 サウルがイスラエルの王になったきっかけは、アンモンの王ナハシュとの戦いでした。イスラエルに攻め込んできたアンモン軍と戦おうと、サウルが呼びかけました。全イスラエルから33万人が呼びかけに応じ、アンモン軍を撃退しました。これがきっかけになってサウルがイスラエルの王になりました。そしてアンモンの王ナハシュはイスラエル王と和解したと思われます。
 ダビデの時代もナハシュとは友好関係が続いていました。そのナハシュが亡くなり、王子ハヌンが新しい王になりました。ダビデは使者を送り、哀悼の意を表そうとしました。
 ところがアンモンは、ダビデの使者がスパイではないかと疑い、追い返しました。しかもひげをそり、服の腰から下を切り落としてから追い出したのです。

 イスラエル人もアンモン人も、男性は顔全体を覆うひげを生やし、よく手入れします。それを他人にそられるというのは、とても恥ずかしいことでした。
 サムエル記では、半分そられたと書いてあります。顔の半分だけひげがないのです。文化的な背景を抜きにしても、それは恥ずかしいです。
 しかも腰から下の服が切られています。下半身が丸見えです。これは恥ずかしすぎます。
 ダビデはこれをイスラエル全体に対する侮辱として受け取り、将軍ヨアブ率いるイスラエル全軍を送りました。アンモンもアラムとツォバの王ハダドエゼルから援軍を雇い、メデバの前に陣を張りました。
 こうしてメデバの戦いが起こります。

 アンモンとの戦いでは、ダビデはイスラエル軍の指揮をヨアブに任せました。ヨアブはダビデのお姉さんの息子で、ダビデと共に戦ってきた勇士です。暴力的な性格ではありましたがダビデはヨアブを信頼し、メデバの戦いに向かわせました。
 アンモン軍はメデバの町の前におり、イスラエルはその正面に陣を張りました。そこにアラムからの援軍が到着し、イスラエル軍は敵に挟まれる形になってしまいました。よもやよもやです。
 ここでヨアブは軍を2手に分け、半分を弟のアブシャイに任せました。そして自分はアラム軍と戦い、弟にはアンモン軍と戦わせました。
 そしてこう言います。
 「アラム人がわたしより強ければ、こちらを助けてくれ。アンモン人がお前より強ければ、そちらを助ける。我らの民のため、我らの神の町々のため、雄々しく戦おう。主が良いと思われることを行ってくださるように。」
 ここには互いに助け合うこと、全力を尽くして戦うこと、神の助けを信頼することが語られています。

戦いはチームワーク

 戦いはチームワークです。
 侮辱された家臣のためにダビデは憤り、ヨアブを送りました。敵に挟まれたヨアブは、弟のアブシャイと共に戦いました。そしてヨアブとアブシャイは互いに助け合うことにしました。
 イエス様も宣教という戦いに、弟子たちを2人1組のチームにして送り出しました。
 チームで支え合うことで困難な戦いを乗り越えることができます。

9 ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い。10 倒れれば、ひとりがその友を助け起こす。倒れても起こしてくれる友のない人は不幸だ。11 更に、ふたりで寝れば暖かいが/ひとりでどうして暖まれようか。12 ひとりが攻められれば、ふたりでこれに対する。三つよりの糸は切れにくい。

コヘレトの言葉4:9-12

 私たちも神様からチームとして宣教の戦いに送られています。
 私たちは1つの体です。それぞれの賜物を活かして共に戦うのです。
 互いによくコミュニケーションを取りましょう。
 うれしいことがあったら知らせてください。喜びは分かち合うとき倍に増えます。
 つらいことがあっても知らせてください。悲しみは分かち合うとき半分に減ります。
 互いに関心を持ち、祈り合うのです。
 特に信仰が与えられたばかりの人たちのために祈ってください。悪魔がほえたける獅子のように狙っています。
 イエス様もお願いしています。一緒に目を覚まして祈りましょう。

全力を尽くして戦う

 人生には戦わなければならない時があります。
 平和を愛するクリスチャンだからと言って、どんなことも感謝、今の状況に満足です、などと言っていてはいけません。
 大切な人が危険にさらされているとき、弱い人がひどい扱いを受けているとき、神の名が侮辱さらされているときには立ち上がらなければなりません。
 アンモンの王がイスラエルの町を侵略してきたなら戦わなければなりません。イスラエルの民が奴隷になっているなら救い出さなければなりません。敵が万軍の主の名を侮辱するなら、相手が巨人であっても立ち向かわなければならないのです。
 私個人の考えでは、武力で問題は解決しないと思っています。非暴力です。しかし相手の言いなりにはならない。不服従です。そして愛こそが敵を滅ぼす最強の武器だと信じています。

戦いに臨む者への神の励まし

 戦いの方法は様々ですが、聖書には戦いの場面が数多く記録されており、神は戦うイスラエルの兵士たちを励ましています。
 特にヨシュア記はカナンの地を占領した記録で、戦いの連続です。
 そのヨシュア記の最初に神はヨシュアにこう言いました。

わたしは、強く雄々しくあれと命じたではないか。うろたえてはならない。おののいてはならない。あなたがどこに行ってもあなたの神、主は共にいる。」

ヨシュア記1:9

 強く雄々しくあれ。
 神は戦いに向かうヨシュアにこう繰り返しました。
 今日の本文でもヨアブが弟に同じように呼びかけています。他の訳では「強くあれ。全力を尽くして戦おう。」と呼びかけています。
 戦いは避けられない。どうしても戦わなければならない時は、全力を尽くすべし。心を燃やせ。

誰かを守るために実力が必要

 日本国憲法の第9条は戦争の放棄をうたっています。
 このような条文です。

第九条
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

航空自衛隊救難隊の救助訓練

 国際紛争の解決のために戦争と武力の行使はしない。そして軍隊を持たないと言っています。
 自衛隊はどうなんだと思う人もいるでしょう。浜松にも航空自衛隊の基地があり、よく飛行機が飛んでいるのを目にします。
 自衛隊をどう解釈するかは様々な立場がありますが、国を守るために戦力に至らない程度の実力を持つことは憲法に違反しないというのが日本政府の見解です。
 災害があったときに人を助けたり、武装勢力に支配された国から国民を助け出したりするためには、どうしても力が必要です。強さが求められます。
 その強さをどう用いるかが大事です。

力は人を生かすために与えられている

 炭治郎は魘夢との戦いに勝利し、煉獄さんの活躍で無限列車の乗客200名全員を守ることができました。
 しかし映画はハッピーエンドで終わってくれません。そこに猗窩座という鬼が現れます。
 強さを求める猗窩座は、煉獄さんに鬼になれと言って誘います。人はやがて衰え、死んでいきます。鬼になればいつまでも強くなり続けることができます。
 煉獄さんは猗窩座の誘いを断りました。彼にとって強さとは、弱い人や貧しい人を守るために与えられたものだからです。

 神は人に力を与えました。その力をどう使うかが大事です。
 神が人に力を与えた目的は、誰かを傷つけるためではありません。誰かを守るために、人を生かすためにこそ、私たちには力が与えられています。
 だから私たちには、神様から与えられた力をもって全力で戦わなければならない時があります。
 強く雄々しくあれ。心を燃やし、全力を尽くせ。神はそう呼びかけています。

共にいる神の恵みを信じて進む

 戦うときに力の使い方を間違えないようにするにはどうしたらいいでしょうか。
 神様はヨシュアに、右にも左にもそれず、真っすぐに神の言葉に従えと言いました。
 私たちは与えられた力を使い、全力で戦います。その前提にあるのは神の言葉です。神の言葉に従った上で、力を尽くし戦うのです。
 ヨアブも言っています。
 「主が良いと思われることを行ってくださるように。」
 戦いの最終的な結果は神様に委ねています。戦うからには全力を尽くして戦うわけですが、神様が望むことが行われることを願っています。

神の恵みが先にある

 神がヨシュアに語った言葉の最後に、こう約束されています。
 「あなたがどこに行ってもあなたの神、主は共にいる。」
 神様が一緒にいるから、私たちは戦うことができます。
 事実、このメデバの戦いは神の恵みが先にありました。
 ヨアブと兵士たちがアラム軍と戦おうとすると、アラム軍は逃げ出しました。
 何が起きたのかはわかりません。剣を交える前に敵は逃げ出してしまいました。援軍として来たアラム軍が逃げ帰ったのを見て、アンモン軍も退却しました。
 だから結局、ヨアブもアブシャイも自分では戦っていません。戦おうとすると敵がいなくなってしまいました。
 神様の恵みが先にあります。

恵みのみ

 私たちが神様に従おうとするとき、先に働く神の恵みがあります。このことを忘れてはいけません。
 100%自分の力で戦うのではありません。
 50%は自分がやって50%は神様にやってもらうのでもありません。
 まず100%神様の恵みがあって、そこに全力で従っていくのです。

リオデジャネイロオリンピックで金メダルを受賞したサッカーブラジル代表。ネイマールの鉢巻には100% JESUSの文字。

宣教という戦いに遣わされている

 私たちには戦わなければならない時が来ます。
 大切な人を守るために全力を尽くさなければならない時が来るかもしれません。クリスチャンとして生きていくために万軍の主の御名で立ち上がらなければならない時があるかもしれません。
 どんな時でも、神様が共にいてくださいます。インマヌエルの神、イエス様は世の終わりまでいつも私たちと共にいます。
 だから私たちは宣教の戦いにも全力で挑むことができます。

19 だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、20 あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」

マタイによる福音書28:19-20

 今週も共にこの戦いを雄々しく戦い抜きましょう。

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