祈りの家である神殿

エゼキエル書講解38

祈りの家である神殿

歴代誌下 6:18-21, 32-39

18 神は果たして人間と共に地上にお住まいになるでしょうか。天も、天の天も、あなたをお納めすることができません。わたしが建てたこの神殿など、なおふさわしくありません。19 わが神、主よ、ただ僕の祈りと願いを顧みて、僕が御前にささげる叫びと祈りを聞き届けてください。20 そして、昼も夜もこの神殿に、この所に御目を注いでください。ここはあなたが御名を置くと仰せになった所です。この所に向かって僕がささげる祈りを聞き届けてください。21 僕とあなたの民イスラエルがこの所に向かって祈り求める願いを聞き届けてください。どうか、あなたのお住まいである天から耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください。

32 更に、あなたの民イスラエルに属さない異国人が、大いなる御名、力強い御手、伸ばされた御腕を慕って、遠い国からこの神殿に来て祈るなら、33 あなたはお住まいである天から耳を傾け、その異国人があなたに叫び求めることをすべてかなえてください。こうして、地上のすべての民は御名を知り、あなたの民イスラエルと同様にあなたを畏れ敬い、わたしの建てたこの神殿が御名をもって呼ばれていることを知るでしょう。34 あなたの民が敵に向かって戦いに出て行くとき、あなたの遣わされる道にあって、あなたのお選びになったこの都、わたしが御名のために建てた神殿の方を向いてあなたに祈るなら、35 あなたは天からその祈りと願いに耳を傾け、彼らを助けてください。36 もし彼らがあなたに向かって罪を犯し、――罪を犯さない者は一人もいません――あなたが怒って彼らを敵の手に渡し、遠くあるいは近くの地に捕虜として引いて行かれたときに、37 彼らが捕虜になっている地で自らを省み、その捕らわれの地であなたに立ち帰って憐れみを乞い、『わたしたちは罪を犯しました。不正を行い、悪に染まりました』と言い、38 捕虜になっている地で、心を尽くし、魂を尽くしてあなたに立ち帰り、あなたが先祖にお与えになった地、あなたがお選びになった都、御名のためにわたしが建てた神殿の方を向いてあなたに祈るなら、39 あなたはお住まいである天からその祈りと願いに耳を傾け、裁きを行い、あなたに罪を犯した民を赦してください。

空間も時間も超越する神

 私たちは3次元の世界を認識しています。前後、左右、上下の世界です。これら3つの軸で構成される空間の中を移動できます。
 時間という軸もあります。過去、現在、未来です。
 しかし時間を自由に行き来することはできません。

タイムマシン「デロリアン」(BACK TO THE FUTURE)

 「BACK TO THE FUTURE」のようなSFでは未来に行ったり過去に行ったりする話もあります。
 そんなのはあり得ないと思うかもしれませんが、ただ人間には認識できないというだけの話かもしれません。

 もし2次元の世界に生きているものがあるとしたら、3次元だって認識できません。
 マリオは前後と上下に移動できます。もしクリボーが左右に動いたら、マリオは奇跡だと思うでしょう。マリオの目から見るとクリボーが急に消えたり現れたりするのですから。
 しかし人間にとって3次元の移動は当たり前です。

 人間を超越した神が、空間に捕らわれず、時間にも捕らわれないとしても、当たり前ではありませんか。

国を越え世代を超える祈りの領域

 今日の本文はソロモンの祈り。ソロモンは神殿に向かって祈ります。
 神殿は主の名が置かれるところだと言われています。神が「わたしの家」と表現するところもありますが、神様がそこに住むわけではありません。
 神様は空間を超越しており、地上のどこかに留めることはできません。「神は果たして人間と共に地上にお住まいになるでしょうか。」いや、できない。地上どころか天も、その上の天も、神様を納めることはできないのです。
 ソロモンはまずそのような神様の偉大さを賛美します。

神は一人一人の祈りを聞く

 しかし神様がそのように大きな存在なら、地上の一人の人間の祈りなど聞けるだろうか。
 高いビルから地上の人間を見下ろせば、一人一人は小さく、彼らがどのような人間かわからなくなります。
 それでも神は空間を超越した神なので、天の天さえも納めることができない大きな存在でありながら、地上の一人一人をご覧になります。
 聖徳太子は10人の声を聞き分けたと言います。それはすごいことです。
 神様は10人どころではなく、70億人の声を聞け分けます。

主は世界中至るところを見渡され、御自分と心を一つにする者を力づけようとしておられる。

歴代誌下16:9a

 神様は世界中の人々を見渡し、その心までも見ます。そして祈りを聞きます。
 今の世界人口は70数億人ですが、70億分の1の確率で聞いてもらえるということではありません。
 70億人一人一人を神様は同時にご覧になり、同時にその声を聞きます。
 奥まった部屋で誰にも知られずひっそりと祈る祈りも聞き逃しません。

ソロモンの7つの祈り

 ソロモンは様々な状況を想定して祈ります。7つの祈りがあります。
 神が正しく裁くこと①。
 罪のために戦争で負けた時②や雨が降らなくなった時③、病気など様々な災いの時④に、神に立ち帰った人たちの罪を赦すこと。
 そして外国人の祈りを聞くこと⑤。
 戦争の時の助け⑥。
 捕囚として連れ去られた時の赦し⑦です。

祈りは空間を超え時間を超える

 ソロモンは自分のためだけではなく、民全体のために祈ります。
 今の民だけではなく、子孫の世代のためにも祈ります。数百年後に起こる捕囚のためにも祈っています。
 そしてイスラエルだけでなく外国人のためにも祈ります。
 ソロモンの祈りの領域の広さが分かります。
 民全体のため。次世代のため。外国人のため。遠く離れている人のために祈ります。
 そして神はこれらの祈りを聞きます。
 祈りは空間を超え、時間を超えるのです。

空間を超え時間を超えるイエス様の祈り

 イエスのもとに百人隊長が来て、部下の癒しを願いました。
 彼はイエスが来てくれなくても、ひとこと言ってもらえたらいいと言います。
 イエスは感心し、「帰りなさい」と答えます。
 ちょうどその時、部下の病気が癒されました。
 イエス様の言葉は空間を超えて働きます。イエス様の祈りが空間を超えたとも言えます。

 イエス様はゲツセマネで弟子たちのために祈りながら、次世代の弟子たちのため、すべての人のためにも祈ります。

20 また、彼らのためだけでなく、彼らの言葉によってわたしを信じる人々のためにも、お願いします。21 父よ、あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。彼らもわたしたちの内にいるようにしてください。そうすれば、世は、あなたがわたしをお遣わしになったことを、信じるようになります。

ヨハネによる福音書17:20-21

 イエス様は12人の弟子たちだけではなく、彼らの言葉によって信じる次世代の弟子たちのためにも祈ります。
 さらにすべての人のため、この世、世界のためにも祈っています。
 未来に向かい世界に向けられたイエス様の祈りは、空間を超え、時間を超え、今も働いています。

祈りの領域は愛の領域に比例する

 私たちの祈りの領域はどこまででしょうか。
 それは私たちの愛の領域の広さに比例します。
 自分のことばかり見る人は自分のことばかり祈ります。こうしたい、こうなりたいと。
 自分も愛せない人は自分のためにも祈ることすらできません。自分のための祈りとなると漠然とした抽象的な祈りばかりで、こうなりたいという具体的な祈りが出てきません。
 まずは自分のために祈れるようになってほしいです。自分を愛せない人が隣人を自分のように愛するというのは不可能ですから。
 それから身近な家族のため、友だちのため、教会の兄弟姉妹のためには祈れるでしょう。
 さらに町のため、国のためにも祈ってほしいです。
 こいつのために祈るのは難しいという人もいるかもしれません。競争相手であったり、自分と思想が合わない政治家など。それでも彼らの祝福を祈るのが私たちの責任です。

 そして自分の生活と関係ないように見える世界のためにも祈ってほしいです。
 貧困や飢餓で苦しむ人たちがいます。
 紛争や災害で住む場所を追われた人たちがいます。
 国から厳しく監視され自由に生活できない人たちがいます。
 今日か明日にでも隣の国から攻め込まれるのではないかと不安の中で暮らす人たちがいます。
 信仰の自由がなく迫害の中で信仰を守り抜く人たちがいます。
 自分のまだ見ぬ次世代の子どもたちや孫たちのためにも祈ってください。彼らはどのような世界に生きるのでしょう。

 ある修道院では毎日、名前も顔も知らない人のためにも祈っているそうです。
 名前も顔も知らない人のために祈れますか?
 普通はそんなことできません。関心がないからです。関心がなければ祈りは出てきません。
 関心がないというのは彼らを愛していないということです。

キリストの愛を受け祈りの領域を広げる

 イエス様はすべての人のために祈りました。世界のため、次世代のために祈りました。
 それはイエス様が世界中のすべての人を世代を超えて愛しておられるからです。
 私たちはイエス様と同じ心を持ちたいと願います。イエス様が愛するものを愛したい。
 だから私たちも祈りの領域を広げて、国のため、世界のため、次世代のために祈る者になりたいです。
 イエス様の愛をいただき、愛の領域を広げ、祈りの領域を広げていただきましょう。

教会で祈りの力を体験する

 今日の本文でソロモン王が自国のイスラエルの民だけでなく外国人のためにも祈っているのには驚かされます。
 主の御業を聞いて外国から神殿に来る人もいるでしょう。しかし神殿には外側に異邦人の庭があり、外国人は神殿に近づくことができませんでした。
 それでも神はその祈りを聞きます。

6 また、主のもとに集って来た異邦人が/主に仕え、主の名を愛し、その僕となり/安息日を守り、それを汚すことなく/わたしの契約を固く守るなら 7 わたしは彼らを聖なるわたしの山に導き/わたしの祈りの家の喜びの祝いに/連なることを許す。彼らが焼き尽くす献げ物といけにえをささげるなら/わたしの祭壇で、わたしはそれを受け入れる。わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれる。

イザヤ書56:6-7

 イスラエルの民だけでなく、異邦人も主を信じ主のもとに帰って来るなら、神はそれを受け入れると約束されています。
 神殿はすべての民の祈りの家なのです。

神殿は祈りの家であるべき

アントニオ・ヴァッシラッキ「キリストの宮清め・キリストの生涯」

 しかしイエス様の時代、神殿は祈りの家ではなく強盗の巣になっていました。
 異邦人の庭は商売の場所として利用されていました。外国に離散していたユダヤ人たちが祭りのために神殿に上ってきた時、神殿でささげられる銀に両替をしたり、いけにえとしてささげられる動物を買ったりする必要があったからです。
 外国から来る人のための配慮として商売が行われたわけですが、宗教指導者たちはそこで多額の手数料を取り、金もうけをしていました。
 それを見たイエス様は縄でムチを作り、商人を追い出しました。
 すべての民の祈りの家であるべき神殿が汚されていることは、許しがたいことでした。

空間を超え時間を超える神の力が教会を通して現れる

 今は神殿がありませんが、教会が祈りの家となっています。
 教会を通して、空間を超え、時間を超えて働く祈りの力を体験できます。

 「神は果たして人間と共に地上にお住まいになるでしょうか。」ソロモンは、そんなことはできないと考えました。
 しかし神様は人間と共に地上にお住まいになりました。
 それがイエス様です。
 天の天さえも納めることができない神様が地上にお住まいになるという驚くべき出来事が、イエス様の受肉によって起こりました。

 今イエス様は地上にいませんが、教会の頭になっています。教会はその体です。
 天の天さえも納めることができない偉大な神様が、教会の中にいます。

教会はキリストの体であり、すべてにおいてすべてを満たしている方の満ちておられる場です。

エフェソ1:23

 空間を超え、時間を超えて働く神様の力が、教会を通して今この地に現わされるのです。
 この恵みを体験してください。

神から遠く離れているように見えても祈りは届く

 先々週までユース礼拝がオンラインで行われ、ナイトdeライトのドラマーで牧師の田中満矢先生がメッセージを語ってくれました。

 ナイトdeライトは「希望を歌うロックバンド」をキャッチコピーに掲げています。
 彼らがバンドを結成した時、自分たちの活動で1年以内に救われる人が起こされるようにと祈りました。もし救われる人が与えられないなら、この活動を辞めますとも祈りました。
 彼らはクリスチャン中心に結成されましたが、歌詞の中で「神様」「イエス様」とか聖書の言葉を使うことはありません。歌詞は普通の言葉でつづられていますが、その歌詞のメッセージによって、そして彼ら自身の生き方によって、イエス様の愛を表しています。
 直接的に福音を語っているわけではないので、なかなかイエス様を信じ救われる人は与えられませんでした。

 しかし彼らが活動を始めて1年が経とうとしていたころ、祈りの期限が過ぎようとしていた時、ようやく救われる人が与えられました。
 その人はバンドのメンバーの中で唯一クリスチャンでなかった平野さんでした。
 彼はナイトdeライトの活動を始める前は札幌のすすきのという繁華街で働き、一番教会から遠く、救いから遠く離れているような人生を送っていました。
 そんな彼が最初に救われ、今もナイトdeライトのボーカルとして神様の愛を歌い続け、暗闇のような世界に希望を届ける人生に変えられました。
 祈りの力です。

 私たちの祈りは今すぐ聞かれなくても、時間を超えて成し遂げられます。
 決して無駄にはならず、この目で見ることはできないかもしれないけれど、いつか成し遂げられる時が来ます。
 私たちの祈りは遠く離れた世界の、見知らぬ人のためにも働きます。
 時間を超え、空間を超えて働く祈りの恵みを体験しよう。

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